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Carat COOのブログ

遊びからプライベートまで。

「高専生に贈る『起業』という選択肢」

この記事は、母校である舞鶴高専から同窓会誌への寄稿依頼を受け、書いたものです。

母校である舞鶴高専以外にも、全国の高専生へ起業家の後押しになればと、こちらにも掲載します。

※ 同窓会誌には校閲後に修正した文章を掲載しておりますが、当ブログの記事は、少し表現に棘があるオリジナルのまま掲載しております。

 

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「 高専生に贈る『起業』という選択肢 」

  平成26年 電気・制御システム工学専攻卒業生 吉崎亮介

 

本科・専攻科と併せて7年間在学した舞鶴高専を卒業して、早3年になります。

私は、舞鶴高専専攻科を卒業後、京都大学大学院へ進学し、今年の春、25歳にしてようやく社会人となりました。

高専生は大学生と比べると就職が早いため、私の周りはもう就職5年目のメンバーばかりで、この間の高専時代の友人の結婚式では、その友人が既に中堅の役割を担っているとスピーチで友人の上司が話していました。

比較的遅かった社会人のスタート。

期待に胸を膨らませて入社した2016年4月の私。

そんな私がいま、早くも会社を退職し、仲間と一緒に自分達の会社を興しています。


まず起業に至る経緯の前に、どのような人生を歩んできたか紹介させて下さい。

 

高専入学前は京都府綾部市立八田中学校で1学年31人という非常に小さな学校で野球少年として、のびのびと過ごしていました。

もともと物作り(というよりも壊して原理を知ること)が好きであったことから迷うこと無く選んだ工学系の進路として舞鶴高専がありました。

当時は理系文系といったことを意識した進路選択ではありませんでしたが、いま思うと、この理系の選択肢は非常に幸運でした。


晴れて舞鶴高専に合格し、入学後は軽音学部に入部し、色々なバンドを掛け持ちしながら楽しい学園生活を送っていました。

入学早々、ガソリンスタンドでバイトを始め、16歳になるとバイクの中型免許を取り、バイト代で250ccのバイクと高いエレキベースを購入。

趣味を謳歌する典型的な高専生だったと思います。

そして、お恥ずかしながら勉強はほとんどせず、テストは1科目2時間以内と自分ルールを決め、より短い勉強時間で高得点を取ることに専念していました。

そんな少し不真面目だった私も、専攻科に進学する頃には、バンドメンバーが卒業してしまい、やることがなくなったので、少し勉学に対する気持ちを入れ替えました。

研究は真面目に取り組むと案外面白いもので、研究を継続するために、大学院進学を決め、過去10年間は進学者がいなかった京都大学大学院へ必死に勉強の末、合格しました。

ここでひとつ教訓がありました。

私はプライドが高かったため、京都大学へ進学するともなれば、さぞ友人は、ちやほやしてくれるのであろうと心の中で期待していました。

しかし、現実はそうではなく、友人は皆いつものような接し方でした。

でも、よく考えるとそうです。

同じ立場で友人が京都大学に合格すると、「すごいな」とは思いますが、崇めようとは思いませんし、所詮他人事です。

この時に、人からの評価のために頑張っても結果は虚しく、本当に大事なことは自分自身が納得できることだと気づきました。

この時点で、既に22歳でしたが、それでも早く気づけた方ではないかと思います。


そして、京都大学大学院に入学後は、研究漬けの毎日を送りました。

コンピューターサイエンスと呼ばれる分野で、いま流行りの機械学習をベースに製造業における品質改善やコスト削減に貢献する研究に従事していました。

その成果もあり、修士2回生で発表した化学工学における世界最大級の国際会議にて、最優秀若手論文賞を受賞し、教授に大喜びしてもらうことができました。

化学工学の世界では、世界でTop5に入るといわれる京都大学の教授が大喜びすることは、ただ事ではないなと思い、非常に嬉しかったです。

研究の合間を縫って海外旅行にもよく行き、修士2回生のときは1年間で12ヶ国に訪れました。

大学院での研究成果もあり、出場するハッカソンは全て優勝、海外経験もあるといった背景から、就職先には不自由しなかった最中、私が就職先として東証マザーズに上場直後のITベンチャー企業を選択したときは、教授もさすがに驚いておられました。

あまのじゃくな私にとって、大手日系企業といった定番のルートではなく、自分の手で大きくできるITベンチャーの方が魅力的だったのです。

大手日系企業に就職すると、親族が喜び、知人には自慢できるだろうなと思うこともありましたが、それこそ京都大学に合格した時の二の舞です。

自分が最も納得できる選択をしようと決めた人生です。

まだ大手とは言えない規模でしたが、「なんでこの会社に決めたの?」と聞かれたとき、他の就活生よりも何倍も会社の良いところ、そして本気で考えているからこそ、会社の改善点もたくさん挙げられる自信がありました。

就活を終えると、また本格的に研究を開始。

修士論文は50ページ全てを英語で書き、ジャーナルに2本投稿し、私の大学院生活は終わりを告げました。


そして、今年の春、ITベンチャー企業に入社しました。

社員300人、アルバイト700人の計1000人規模の会社です。

内定を決めた頃には500〜600人程度であったため、急成長中のベンチャー企業と言えます。

ベンチャー企業とは言え、ちゃんと2ヶ月間の新人研修がありました。

ただ、私は最初から手を挙げて、入社2週間で全社向けの社内の勉強会を企画したり、なぜか新卒研修のシステム開発の講師をしたりと、やりたい放題させてもらっていました。

残業や土日など全く気にせず、終電まで残って社内で功績を残すための開発や議論をしていました。

その甲斐があり、新卒研修後の本配属では、社長室というポジションを社長直々に作ってもらいました。

社長の前に座らせてもらい、座っている机の周りは役員の方々という異例の光景でした。

本配属後もさらに勢いは増し、何でも屋として更に手広く働きました。

本配属後は、5ヶ月間でしたが、ある程度成果に結びつけられるところまで携われました。

そして、最も大きな成果が、日本最大級のゲーム開発者カンファレンスCEDEC2016の招待講演に単独で登壇できたことです。

そんな他の人から見ると順風満帆に見える社会人生活でしたが、起業するために、入社7ヶ月後の10月いっぱいで退職しました。


なぜ、このようにリスクを冒してまで起業するのでしょうか。

私の中では、IT系で挑戦することは、そもそもリスクではないと考えています。

会社に甘え、その会社でしか生きていけない人材となってしまうことの方がリスクと思えるからです。

その上、起業して事業を成功させることができれば、そのリターンの全てが自分自身に返ってきます。

会社であると、失敗したときの金銭的リスクが自分に降ってくることはありませんが、その代わり成功したときの金銭的リターンも、その利益額と比較すると微々たるものになります。

例えば、開発したシステムにより、月々1億円のコスト削減を実現出来ることはよくありますが、それを実現できたとしても、月々の報酬が多少上がる程度で、毎月1億円を給料として貰えることはまずありません。

しかし、起業して成功すれば、極端な話ですが、月々1億円を貰うことは可能です。

ぜひ「金持ち父さん 貧乏父さん」という本を読んでみて下さい。

もしくはフランスの経済学者であるピケティの記事でも良いです。

ピケティが唱える有名な「r > g」という法則があるのですが、これは、従業員が働いて得る利益率よりも、資産家が運用する資産からの利益率の方が高いと過去のデータが示しているそうです。

つまり、従業員が必死で働くよりも、お金持ちが働かずに手持ちのお金で投資をする方が稼げるという訳です。

また極端な例ですが、必死に働いているお父さんよりも、全く働かないお金持ちのお父さんの方が稼いでいるのです。

そして、一般庶民が働き続けるサイクルから抜け出すには、起業して経営者になる以外選択肢がありません。

もしくは、宝くじで3億円当てて、それを元手に資産運用を始めるかです。

私は大学院時代にこの事実を知り、サービスを作る実践経験と多少の貯金、そして仲間が見つかれば直ぐに始めようと決めてから入社しました。

そして、幸運にも社内で2人同じ志のメンバーが見つかり、入社早々ではありましたが、善は急げということで、10月いっぱいで退職して、起業することに決めたのです。


これから始まる起業家人生がどうなるかは、もちろんまだ分かりません。

しかし、自分が失敗だと思わなければ失敗ではないと思っています。

会社の事業が軌道に乗れば成功ですし、事業がうまくいかず倒産して再就職した場合にも、会社を経営した経験が活かせれば成功だと思っています。

少なくとも、私の人生の中では、チャンスがあるのに行動せず、次第に臆病になっていくことが失敗だと思います。

 

高専は実践機会も多く、非常に優秀な学生が輩出される中、起業家がほとんど出ないと言われています。

その背景には、高専という狭いコミュニティで5年間過ごし、さらに就職時には学校の推薦リストから選択するという、外の世界にほとんど目を向けない問題があると思えます。

人間は面白く、一度就職し、生活レベルが上がると、リスクを冒してまで生活レベルを下げることができないものです。

つまり、最初の選択がほとんどの人にとって、最後の選択になるのです。

この事実を知ってもなお、親御さんにとっては、大事なお子さんには、起業して欲しいとは思わないかも知れません。

こう言う私も、もし親御さんの立場で考えると、子供には安定した道を進んで欲しいと思う気がします。

親御さんからの推薦はほぼ間違いなくありませんが、高専生の諸君にはぜひ起業家を目指して欲しいと思っています。

起業はあくまで手段ですが、高専生は物作りに長けており、そういったエンジニアが起業すれば、世の中を良くしてくれる製品で満ちあふれると思います。

私やこの記事を読んでやる気になった高専生が起業家として成功すれば、一種のロールモデルが出来上がり、つぎの世代の起業に対する心理的ハードルがぐっと下がります。

そして、後続できた高専生が次々と成功すれば、間違いなく良い世の中になっていくのではないかとわくわくしています。

それでは、可能性を秘めつつも、視野が狭くなりがちな高専生に、この寄稿により少しでも視野を広げてもらえることを願い、これを締めの言葉とさせていただきます。

 

株式会社Carat 取締役 兼 最高執行責任者 吉崎亮介

 

 

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